製造業のタイムカード集計方法を、手順と計算例で解説(残業・深夜・夜勤・交代制)
「月末のタイムカードの集計が、毎月、重い」「夜勤や残業が重なったときの、数え方がわからない」。製造現場では、早出・残業・夜勤・交代制が重なり、集計が、特に複雑になります。この記事では、タイムカードを手で集計する手順を、計算例つきで、最初から順番に説明します。最後に、手計算で、ミスが起きやすい場所と、減らす方法も紹介します。
割増賃金の率や、休憩・端数の扱いには、法律の決まりがあります。この記事は、一般的な内容の説明です。会社の個別の事情については、顧問の社会保険労務士や、労働基準監督署に、確認してください。
タイムカード集計の、全体の流れ
集計は、次の5つの手順で、行います。
- 1日ごとに、出勤と退勤の時刻から、拘束時間を出す
- 休憩を引いて、実働時間を出す
- 実働を、所定内・法定内・時間外・深夜・休日に、分ける
- 1か月で合計する(端数の処理を、ここで行う)
- 時給や、月給の割増単価をかけて、金額を出す
大切なのは、1日ごとに、分けてから、合計することです。合計してから、分けようとすると、間違えます。
手順1: 拘束時間と、実働時間を出す
拘束時間は、「退勤 − 出勤」です。実働時間は、そこから、休憩を引いた時間です。
| 出勤 | 退勤 | 拘束時間 | 休憩 | 実働時間 |
|---|---|---|---|---|
| 9:00 | 18:00 | 9時間 | 1時間 | 8時間 |
| 9:00 | 20:30 | 11時間30分 | 1時間 | 10時間30分 |
| 14:00 | 22:00 | 8時間 | 45分 | 7時間15分 |
休憩の決まり
法律では、休憩は、労働時間によって、最低限の長さが決まっています。
- 労働時間が6時間を超える場合: 少なくとも45分
- 労働時間が8時間を超える場合: 少なくとも1時間
休憩は、労働時間の途中に与えます。タイムカードに、休憩の打刻がない場合は、「就業規則で決めた休憩時間を、自動で引く」のが、一般的です。ただし、実際には、休憩が取れていない日がないか、確認します。
手順2: 所定内・法定内・時間外に分ける
ここが、いちばん間違えやすい所です。次の2つの言葉を、区別します。
- 所定労働時間: 会社が、就業規則や契約で決めた、1日の労働時間(例: 7時間30分)
- 法定労働時間: 法律が決めた上限。1日8時間、週40時間(業種や規模によって、特例があります)
法定労働時間を超えた分が、時間外労働(残業)です。割増賃金の対象は、この法定の時間外です。会社の所定を超えて、法定の範囲に収まる分は、「法定内残業」と呼びます。割増は、法律上は必須ではありませんが、会社の規則で、割増にしている場合があります。
計算例: 所定7時間30分の会社
所定労働時間が7時間30分の会社で、実働が9時間の日を考えます。
| 区分 | 時間 | 説明 |
|---|---|---|
| 所定内 | 7時間30分 | 会社が決めた、通常の労働時間 |
| 法定内残業 | 30分 | 所定は超えたが、8時間以内 |
| 時間外(法定超) | 1時間 | 8時間を超えた分。25%以上の割増 |
手順3: 深夜と休日を、別に数える
深夜労働
午後10時から午前5時までの労働は、深夜労働です。25%以上の割増賃金を払います。残業の割増とは、別に数えます。
休日労働
法律で決められた法定休日(週に1日、または4週に4日以上)に働いた時間は、休日労働です。35%以上の割増賃金の対象です。
休日労働の時間は、「時間外労働」には、含めません。別の区分として、数えます。会社の休日であっても、法定休日でない日(たとえば、週休2日の、もう1日)は、法定休日ではありません。この場合は、週の労働時間が、40時間を超えたかどうかで、時間外かどうかを、判断します。
製造業で多い、夜勤・交代制の数え方
製造現場では、日をまたぐ勤務が、普通にあります。次の点を、先に決めておきます。
日をまたぐ勤務は、どの日の勤務か
たとえば、夜勤が、22:00に始まり、翌朝6:00に終わる場合です。継続した勤務が、2つの暦日にわたる場合は、始業時刻の属する日の勤務として、1つの勤務に、まとめて扱うのが、原則です。
| 勤務 | 始業 | 終業 | 扱い |
|---|---|---|---|
| 夜勤 | 10月1日 22:00 | 10月2日 6:00 | 10月1日の勤務として、8時間(休憩を除く) |
ただし、休日労働かどうかの判断は、暦日(午前0時から午後12時)で行うのが、原則です。休日の前日から、休日にまたがる夜勤は、休日労働になる部分が、出てくる場合があります。交替制の場合に、例外の扱いもあります。個別の判断は、社会保険労務士や、労働基準監督署に、確認してください。
深夜の時間の切り出し
夜勤は、22:00から5:00の、深夜の時間が、多く含まれます。1日の中で、深夜に当たる時間を、必ず分けて数えます。夜勤が、深夜の割増の対象になることを、忘れないようにします。
交代制の、週40時間の判断
交代制で、勤務の時間帯が、週ごとに変わる場合は、週の労働時間の合計が、40時間を超えるかを、必ず確認します。日ごとに、8時間以内でも、週の合計で、超えることがあります。
割増賃金の率と、重なったときの計算
| 働いた時間 | 割増の率(最低) |
|---|---|
| 時間外労働(法定の1日8時間・週40時間を超えた分) | 25%以上 |
| 時間外労働(月60時間を超えた分) | 50%以上 |
| 深夜労働(午後10時〜午前5時) | 25%以上 |
| 休日労働(法定休日) | 35%以上 |
月60時間を超える時間外の、50%以上の割増は、2023年4月から、中小企業にも、適用されています。
割増が、重なる場合
割増は、重なると、足し算になります。
| 重なり方 | 割増の率(最低) |
|---|---|
| 時間外 + 深夜 | 25% + 25% = 50%以上 |
| 休日 + 深夜 | 35% + 25% = 60%以上 |
| 月60時間超の時間外 + 深夜 | 50% + 25% = 75%以上 |
金額の計算例
時間あたりの賃金(時給)が1,200円で、時間外の深夜に、2時間働いた場合です。
- 時給の基礎: 1,200円
- 割増の率: 時間外25% + 深夜25% = 50%
- 1時間あたり: 1,200円 × 1.5 = 1,800円
- 2時間分: 3,600円
月給の人は、まず、月給から、1時間あたりの賃金を出します。「月給 ÷ 1か月の平均の所定労働時間」が、基本の考え方です。ここに含める手当と、含めない手当には、決まりがあります。給与の設定は、社会保険労務士に、確認してください。
手順4: 1か月で合計する(端数の処理)
1日ごとに分けた時間を、月の合計にします。ここで、端数の処理が、問題になります。
- 1日ごとに、切り捨てるのは、原則として、認められません。働いた時間の賃金を、全額払う決まりがあるためです。
- 1か月の、時間外・休日・深夜の合計時間に、1時間未満の端数がある場合に、30分未満を切り捨て、30分以上を、1時間に切り上げる処理は、事務の簡素化として、認められています。
端数の処理は、会社の規則と、法律の両方に、合わせる必要があります。迷ったら、確認してください。
手計算で、ミスが起きやすい場所
- 日をまたぐ勤務: 夜勤で、日付が変わる。どの日の勤務に、数えるかを、先に決めます。
- 休憩の引き忘れ: 引いたか、引いていないかが、わからなくなります。
- 深夜の時間の切り出し: 22時をまたぐ勤務で、22時前と後を、分け忘れます。
- 週40時間の判断: 日ごとには、8時間以内でも、週の合計で、40時間を超えることがあります。早出・残業・休日出勤が、重なる製造現場で、特に多い間違いです。
- 打刻の抜け・間違い: 後から直すと、元の記録が、わからなくなります。
特に、1と4は、慣れた人でも、間違えます。
集計を、楽にする方法
手計算は、人数が少ないうちは、できます。人数が増えると、月末に、数時間から、数日かかるようになります。楽にするには、次の2つです。
- ルールを、先に、書き出す: 締め日、1日の区切り、休憩の扱い、端数の処理、法定休日の曜日。
- 打刻を、電子の記録にして、集計を自動にする: 読み取りと、転記の作業が、なくなります。
詳しくは、タイムカードの打刻漏れ・押し忘れ、どう対応する?も、あわせてご覧ください。
よくある質問
Q. 15分ごとに、切り捨ててもよいですか?
1日ごと、または、打刻のたびに、切り捨てるのは、原則として、認められません。実際に働いた時間の賃金を、払う必要があります。
Q. 残業が、月に60時間を超えたら、どうなりますか?
超えた分の割増が、50%以上になります。深夜と重なると、75%以上です。
Q. 管理職は、残業代がありませんか?
「管理職」という呼び名では、決まりません。法律の「管理監督者」にあたるかは、仕事の内容や、権限、待遇で、実質的に、判断されます。ただし、管理監督者でも、深夜の割増は、必要です。個別の判断は、専門家に、確認してください。
まとめ
- 集計は、1日ごとに分けてから、合計する
- 区分は、所定内・法定内・時間外・深夜・休日
- 割増は、重なると足し算(時間外+深夜=50%以上)
- 端数の処理は、1日ごとの切り捨てが、原則として、認められない
- 手計算の、ミスの場所は、日またぎ・休憩・深夜・週40時間・打刻の抜け
Hatanowa(ハタノワ)は、製造業の現場向けの社内ポータルです。会社で決めたルールで、実働・時間外・深夜・休日の時間を、自動で集計し、CSV で出力します。打刻の抜けは、「要確認」として表示されます。いま、最初に使ってくださる会社(モニター)を、募集しています。